<青年期T―6> 音楽鑑賞

高校三年ぐらいだろうか、小説を読みふけるようになった。

きっかけはさだかではないが、日本文学全集や世界文学全集などを古本屋にいっては買いあさっていた。買ったからといって、すぐ読むわけでもなかった。本棚に飾っておくだけでも、かっこよいと思う時期だったのかもしれない。

日本のものでは、武者小路実篤や田山花袋、芥川竜之介などだったろうか。最も衝撃的に読んだのは、伊藤左千夫の「野菊の墓」だった。映画にもなったが、あれは小説のほうがよかった、映画では感激が薄れた。先に小説を読んでいたためかもしれないが。

 

それにしても、格好をつけていたのだろうか、世界文学全集を読んだ。

スタンダールの「赤と黒」などわけもわからず読んだ。読んだといっても、めを通したといったほうがよいかもしれないが。

そのなかでも時間をかけて、ある程度内容がわかって読めたのは、ロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」だった。これは超長編である、ベートゥベンの生涯を題材に描いたものだというが、波乱にとんだ内容はとくに印象に残った。

 

また、この頃である。喫茶店にいくことを憶えたのは。「純喫茶」「音楽喫茶」「名曲喫茶」などの看板が目に付いた、場所はたいがい池袋だった。

音楽喫茶では古典的な音楽が主流だったような気がする。リクエストすると順番でレコード演奏をしてくれた。「ツゴイネルワイゼン」を好んでリクエストしていたが、他の曲を知らないからであった。

そこで、メンデルスゾーンの「バイオリン交響曲」の出だしのメロディをはじめて聴いたとき、私の身体に衝撃が走ったことをおぼえている。こんなにも美しいメロディがあるものだろうかとおもった。

それからだろうか、音楽会に行くようになった。はじめて行ったのは、後楽園球場での野外音楽会だった、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第一番」や「白鳥の湖」などだった。

その後は、勤め先の労働組合を経由して、何人かの仲間とともに「労音」に加入し毎月、例会といわれる音楽会に参加した。

日比谷公会堂や厚生年金会館などが会場であった。

また、映画でも音楽をテーマにしたものが結構あったような気がする。一番印象に残り7回ぐらい観に行ったのが、「ここに泉あり」という映画だった。群馬交響楽団の誕生までの苦難を描いたもので、随所にポピュラーな古典的な音楽が流れていたので、音楽を聴いたり、曲名を憶えたりするには好都合だったようだ。加東大助、や岸恵子などが出演していた。

 

  青年期1―7に続く
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