「マシニスト」への投稿
クランクシャフト・バランシングの自動化
2010・10・20
これは、1973年に私が35歳の時に、当時担当していた、「クランクシャフト・バランシングマシン」の企画・設計
をやっていたころ、当時の設計室長の松下さんから、朝礼で技術雑誌社から投稿の依頼が来ている、投稿を希望
する者は申出なさい、ということから、当時自分がやっていた「バランシングの自動化」を提案したのである。
この頃は、一番、仕事がおもしろく、脂が乗った仕事ができていたような気がするのである、今、おもえばであるが・・
今、その頃の雑誌を取り出し、思い出にふけっている!
結構、立派なことを書いている!
1974年に雑誌「マシニスト」が発売されたが、実際に記事を 投稿したのは、1973年であった。 |
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技術雑誌「マシニスト」の目次である。 ← ホンダ工機 佐々木 武 の文字が! 「ホンダ工機」と当時は呼ばれていたが、その後、生産技術 部門が一緒になって、「ホンダエンジニアリング(株)」 となった! |
「マシニスト」 VOL18、NO.2 の41頁から47頁までに掲載された。 左の文章を読みやすいように拡大した! はじめに 近来の自動車エンジンの高性能化はめざましく、その一助として、エンジン 回転部のバランシングの技術向上が上げられる。特にクランクシャフト・フライ ホィール・クラッチ等については、国内自動車メーカーはもとより、外国メーカー においても、かなり小さな許容値を求めエンジンの耐久性、振動、騒音への 配慮をしているようである。 自動車エンジンは今後、高性能化から一歩脱却し、振動、騒音をいかに小さな ものにするかに焦点が置かれ、その点からもよりバランスの優れたエンジンが、 要求されてくることが予測される。 さて、日本特有の軽自動車においては、ややもするとこの点がおろそかにされて きたきらいはあったが、最近は振動・騒音への配慮がなされ、とくに本田技研工業 においては軽自動車「ライフ」に2シリンダではさけられない、一次振動を取り除くべ く、クランクシャフトと同期して回転するバランサ機構を設け、4シリンダに匹敵する 振動・静粛性を保ち、さらにクランクシャフトは全自動バランシングマシンにより、 高精度のバランスを保持すべく、計測、修正加工、検査が自動的に行われ、品質の 安定化がなされている。 特に2シリンダクランクの全自動マシンということで、他に類を見ない特徴を有した マシンとなっているが、その計画立案には幾つかの問題を含んでいた。 この実例を基に、クランクシャフトのバランシングについて考えてみる。 1.2シリンダクランク・バランスの特異性 4シリンダ以上のクランクは単体において、バランスがとれているのに対し、2シリン ダクランクはピストン・コンロッド等がアッセンブリされた状態でバランスされ、クランク 単体ではピストン・コンロットの往復、回転慣性質量分だけ、クランクウエイト部が重く なるよう設計されているのが普通である。 このため、・・・・ 以下、省略 |
2. 2シリンダクランク、バランシング自動化における 問題点 2−1 測定の自動化 4シリンダ以上のクランクの場合は、ジャーナル部をフリ クションローラにて駆動する、ノンカップリング方式が安定した測定が得られることから、よく使われているが、 2シリンダクランクの場合は、ウエイト方向に相当量のアンバランスがあるのが普通であり、このアンバランスを如何に打消すかが2シリンダクランク、バランス測定のポイントとなろう。 左下の図は、「2シリンダクランク専用バランス測定機振動台部構造図」 である。 右上の図は、「2シリンダクランク修正能力図」である。 |
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3.クランクシャフトの形状とバランシング 左下の図は、各種の4シリンダクランクの形状図 4.2シリンダクランク、全自動バランシングマシンの実例 右下の図は、「直列2シリンダクランク用全自動バランシングマシン、レイアウト図」 2回修正を行っている。コンピュータや制御盤は二階に 配して、スペースを有効に使っている。 |
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5.エンジンバランシングの今後の課題 エンジンバランスというと一般にクランクシャフト、フライホイール、クラッチ等が主に考慮されているようであるが、エンジン全体のバランスを考えると、バランスに関連する部品を個々にバランシングし、それが組立てられたあとに、個々の部品の組合せ誤差を含めて、再度バランシングを行なうことがエンジンバランスに関しては理想的なのであろうが、現在のところ国内においては一部の高級機種を除いては、このような方法は採用されていないようである。 特に最近、国内において6シリンダエンジンが普及してきたのも、振動が少なくバランスの点で優れたエンジン(4シリンダよりも2次振動が優れている)としてもてはやされている訳で、従来までは、大衆車といえばほとんど直列4シリンダエンジンが搭載されていたが、エンジンバランスに関しては2次振動はさけられず、今後は大衆車といえども6シリンダ化が進む可能性も考えられる。この点からも、シリンダ数が増えれば必然的に数を増すコンロットのバランスが、エンジンバランスに影響する度合いが高くなってくるのではないかと考えられる。レシプロエンジンであるかぎり、コンロットは不可欠な部品であり、往復、回転を共存させてバランスさせねばならず、回転部品(クランクシャフト等)のバランスとは異なるため、コンロットのバランシングは一般的に軽視されがちなのではなかろうか。 コンロットのバランスをコンロット各々で取るか、または、エンジンバランシングとしてエンジンアッセンブリ状態で取るかは、コンロットのアンバランス量およびコスト面等を考え合わせ判断すべきであろう。いずれにしても、エンジンバランスの品質の安定化を考え、どのような方法でエンジンバランスを安定させて行くかを、より真剣に考えて行く時期にきていると思われる。 |